アトピー性皮膚炎への乳酸菌効果

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子どもばかりでなく、おとなにも増え続けているアトピー性皮膚炎。子どものときに発症し、思春期のころまでに自然になおってしまうことの多かったアトピーは、最近、成人になっても完治しない人が増えている。また、成人になってから発症する成人型アトピー性皮膚炎も増大傾向にある。

今年三四歳になるA子さんは、成人してもアトピーがなおらないひとりだ。子どものころからアトピー性皮膚炎といわれ、手のひらや首筋が赤くなり、ときには激しいかゆみを伴って湿疹が出ていた。キウイやマンゴーを食べても全身に湿疹が出て、かゆみがとまらない。自分自身がアレルギー体質であることはわかっていたが、四年前に最初の子どもを産んだときのすさまじいばかりのアレルギー反応は、今でも忘れられない。

二一時間あまり続いた陣痛ののち、やっと出産の運びになったときのことだ。赤ちゃんを取り上げようと医師が彼女に触れたとたん、全身が熱くなりはじめた。何かようすが変! と思う間もなく、みるみるうちに、全身に湿疹が出はじめ、はれ出した。まだ子どもは生まれない。もうひと頑張りしなければならないのに、どうしたことだろう。もうろうとする意識の中で、何かおこったのかもわからない状態が続いた。

無事に出産はすんだ。彼女の体が、医師のしていた医療用のゴム手袋にアレルギーをおこしたのだ。天然ゴム(ラテックス)に対するアレルギー反応だった。誰も予測していないことだった。A子さんは、そのときの恐怖を思い返し、ますます、子どもには自分と同じ体質を受け継がせたくないとの思いがつのった。現在、三歳になる息子は、やはり、生後一~ニカ月で、首筋が赤くはれけじめ、かゆがる。現在、アトピー性皮膚炎と診断され、卵をひかえる生活をしている。

第一子は、自分の体質と似てしまったが、次の子に、できれば自分の体質を引き継がせたくないと思っていた。そんなとき、たまたま、私の前著『GG菌でぐんぐん健康になる本』で、乳酸菌の効果を知った。A子さんは、それまでも、アトピー性皮膚炎に効果のある食事や漢方治療など、さまざまな試みをしてきたが、これ!という効果がみられなかった。そこで、乳酸菌に効果があるのなら、とA子さんは、ヨーグルトを一日に三〇〇グラム食べはじめた。

それまで、牛乳はほとんど飲まなかったし、乳製品も食べてこなかった。しかし、一年ほどするうちに、気のせいか、かゆみが薄らいできたように感じた。二〇〇二年五月に第二子を出産。半年たった現在、子どもの皮膚に、赤みやかゆみはみられない。乳酸菌にはやはり効果があるのだろうかと、A子さんは思っている。

私はA子さんに、「あなたの選択は間違っていない」と伝えたい。次のような乳酸菌のアトピー低減効果の最新情報があるからだ。

二〇〇一年四月、医学雑誌『ランセット』に、注目すべき論文が発表された。フィンランドのツルク大学医学部の、私の友人であるイソラウリー教授とサルミーネン教授による研究だ。アトピーの症状のある妊産婦に乳酸菌(ラクトバチルス・GG株)を与えたところ、生まれた子どものアトピーの発症率が低いとの結果だ。出産予定日二週間前から、出産後六ヵ月間、アトピー症状のある妊産帰一五九人に、乳酸菌と偽薬カプセルを一日二個投与したところ、乳酸菌を投与した母親から生まれた子どものアトピーの発症率は二三%(六四名中一五名)だったのに対し、偽薬投与群では四六%(六八名中三一名)との結果が出たのだ。乳酸菌をとることで、アトピーの発症が半分におさえられたという画期的な報告だ。 

また同大学では、アトピー性皮膚炎の乳児(一四例)に、普通の乳清とGG株を入れた乳清を与えて、症状を観察したところ、GG株を与えた乳児はアトピー性皮膚炎が1ヵ月で改善されたのに対し、普通の乳清だけでは、改善に二ヵ月かかったと報告している。

こうした検査結果は、乳酸菌はアレルギーを軽減できる可能性を秘めているとのデータだ。両親ともにアトピーの症状があれば、予防のために乳酸菌を投与すると、その効果が期待できるわけだ。とくに、乳酸菌のGG株が、アトピー性皮膚炎に対して効果があるといえる。

この検査で使われたGG株は、ヒトの腸管由来の乳酸菌で、アメリカのタフツ大学医学部のゴルバッハとゴルディン両教授が発見した菌だ。日本でも、特定保健用食品(乳酸菌)の第一号として許可され、GG株入りのヨーグルトがタカナシ乳業からすでに販売されている(ラクトバチルスーラムノーザス・GGについては第五章で詳しく述べる)。

日本でも同様に、この乳酸菌(GG株)が新生児のアレルギー性疾患の発症をおさえたとの報告がされている。乳児健診に参加した二~一八ヵ月の乳幼児(平均月齢九・ニカ月) 一五〇三人(男児八三一人、女児六七二人、回収率九五%)と、その保護者を対象に調査したところ、アトピー性皮膚炎がコー五人(七・四%)、食物アレルギー九〇人(五・三%)、気管支喘息四三人(二・五%)、喘息様気管支炎五九人(三・五%)であることがわかった。そこで、妊娠中に乳酸菌飲料をとっていた母親から生まれた子どもと、生後六ヵ月以降に乳酸菌飲料をとっていた幼児について、アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの発症率が低かったという結果が出ている。妊婦、または六ヵ月以降の幼児がヨーグルトを食べると、乳幼児期の子どものアレルギー性疾患をおさえると考察している(『日本小児科学会誌』二〇〇二年)。

また、GG株や、ビフィドバクテリウムーラクティス・Bb112がアトピー性皮膚炎の患者の症状を軽減させたとの報告は、かなりの数になる。

アトピー性皮膚炎の原因は、まだ解明されていない。ある人は卵や牛乳が原因であったり、またある人は、ほこりゃ動物の毛が原因であったりする。さらに、原因が一種類ではなく、複数の物質に対してアレルギーがあることもある。

アトピー性皮膚炎に悩む人たちは年々増えている。とくに乳児期から幼児期の子どもたちは、「牛乳を飲んじやだめ、卵も大豆も食べてはだめ」といわれて育つ。親たちはアトピーのことを考えると、「○○をとっちゃだめ」といわざるをえない。どうしてもアレルギー抗原のない「レス食品」を、子どもたちに食べさせることになってしまう。しかし、「レス食品」だけでなく、乳酸菌や子どもたちが嫌いな野菜や食物繊維をたくさん食べることで、腸内細菌の環境が変わり、子ども自身がもっている免疫力がアップすることもあるのだ。

私の知人に、かなり重度のアトピー性皮膚炎だったお子さんがいた。一〇歳になるその娘さんは、全身かゆがってシーツは毎晩血と膿でじゅくじゅくだし、夜も眠れないほどひどい症状だった。病院を訪れ、治療を受けていたが、いっこうによくならなかった。そこでためしに家族で、穀物、海藻、野菜を中心とした穀物菜食を実践してみることにしたのだ。半年もたったころ、娘さんの顔の赤みがひき、かゆみが薄らいできたという。その後も雑穀と野菜中心の食事を続けることで、たまにアレルゲンであるたんぱく質をとっても、かゆみが出ない体に変わっていったという。

雑穀や野菜には、食物繊維が多い。アトピーの原因であるたんぱく質をとらないということばかりでなく、食物繊維をとることで、腸内細菌叢の環境がよくなり、ビフィズス菌などの善玉菌が増えていったと考えられる。この娘さんは乳酸菌を積極的にとっていたわけではない。が、アトピー症状の好転は、○○を食べない「レス食品の食事」から、より腸内環境をよくする食事に変えたことによるのだろう。

食物に含まれるアレルギー抗原を防ぐlgAを増加させるビフィズス菌や乳酸菌、腸内環境を改善する野菜や食物繊維を毎日食べることで、アレルギー症状を軽減させることができるのだ。

A子さん、あなたの「自分のアトピー体質を子どもには引き継がせたくない。だから私はヨーゲルトや野菜をたくさん食べます」といった選択に、私は心からエールを送りたい。EBM(Evidence Based Medicine l科学的根拠にもとづく治療)による乳酸菌の成果はもちろんのこと、重症の花粉症をヨーグルトで克服した経験をもつもののひとりとして。 

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