ピロリ菌を減少させるLG21乳酸菌
ストレスなしでは語れない現代社会。このサイトを読みながらも、胃痛に悩まされている人がいるかもしれない。胃痛の原因のひとつに、胃潰瘍があげられる。さらにその原因が、胃の中の細菌、ヘリコバクター・ピロリだ。今や日本人の二人に一人が感染しているといわれているピロリは、胃潰瘍のみならず、胃がんとも深くかかわっていることが指摘されている。
ピロリは、胃にすんでいる菌。胃の中は、胃酸のおかげでかなり高い酸性状態に保たれているが、ピロリはそうした中でも生きられる。強い胃酸の中に「まさか細菌などいないだろう」と思われていたため、一〇〇年以上も前の一八七四年にピロリの存在は発見されていたのに、人体にどんな意味をもつかがわかってきたのは、この二〇年ぐらいのことなのだ。
ピロリが強い胃酸の中でも生きられるのは、ピロリがもつ酵素にある。ピロリがもつウレアーゼという酵素が、胃の組織中の尿素を分解して、アンモニアにする。アルカリ性であるアンモニアが胃酸を中和するため、酸性の強い胃の中でも生きのびられるというわけなのだ。
ピロリは、食べ物やふん便、水から感染するといわれ、口本人の場合は、戦中・戦後の衛生状態が悪かった時代に、水や食べ物を介して保菌するようになったのではないかといわれている。
日本人のピロリ感染率の平均は五〇%だが、四〇歳以上では七〇%、若い人だと二〇%と、年代によって、その保菌率が違う。ちなみに、アフリカや南米では、八〇%以上の人がピロリに感染しているといわれている。
胃酸は、食べ物や口から入った異物を殺すが、同時に、胃の粘膜も溶かしてしまうほどの強い酸だ。胃の粘膜は、大量に分泌される粘液によって守られ、また、胃の粘膜細胞から分泌されるアルカリ性の重炭酸イオンによって、粘膜表面が中和されている。
しかし、ピロリが感染すると、アンモニアによって胃酸やペプシンなどの消化酵素が出なくなったり、胃の粘膜に薄くなって胃炎をおこし、それがひどくなると胃潰瘍になる。そうした胃の中を内視鏡でみると、胃の粘膜にピロリがいることがわかる。
東海大学医学部の古賀泰裕教授のデータによると、ピロリを保菌していた人は、胃潰瘍患者で八〇%、十二指腸潰瘍で九四%、慢性胃炎で八三%、胃がんで七六%と高い値を示している。広島県の呉共済病院でも、約八年間にわたって一五二六人の胃のようすを内視鏡で調べている。ピロリを保有している人とそうでない人とをくらべた結果、ピロリを保有していた人の二・九%で、胃がんが見つかったが、ピロリがいなかった患者では胃がんの人はいなかった。そこから、胃炎をおこして胃の粘膜の萎縮が進んでいる人ほど、がんになりやすいのではと指摘している(『ニューイングランドージャーナルーオブーメディシン』二〇〇一年)。
ピロリは胃粘膜表面にすみつき、しだいに胃の粘膜に炎症をおこすため、通常の抗生物質を投与しただけでは、取り去ることは困難だ。また、抗生物質を使い続けると、菌が耐性をもち、きかなくなってくる。抗生物質によってピロリを取り去ることは、八〇~九〇%程度でしかない。内視鏡の手術でピロリを除去することで、胃潰瘍がなおって再発しなくなるケースもあるが、胃の粘膜層にすみついてしぶとく生き抜くのがピロリなのだ。
こうしたピロリをやっつけ、胃潰瘍のリスクを減らしてくれるのが、LG21(ラクトバチルスーガセリ・OLL2716) という乳酸菌だ。
東海大学の古賀教授は、マウスにピロリを感染させる実験をしていたさいに、ピロリがなかなか定着しないマウスの胃の中を調べたところ、多くの乳酸菌がいることを発見した。マウスはヒトと違って胃酸が弱く、胃の中でも乳酸菌が常在できる。実際に胃組織一グラムあたり一万個の乳酸菌がすみついている。そこで、無菌で育てたマウスにピロリを飲ませたところ、すぐに感染した。マウスの腸内にも乳酸菌が多かった。マウスは、自分の出したふんを食べる食ふん動物だ。ぷんと一緒に体の外に出てしまった乳酸菌を、そのふんを食べることで、マウスは再び体に取り込んでいたのだ。このことから、ピロリの感染を乳酸菌が阻害しているのではないか、と実験してみたのだ。
その結果、乳酸菌を投与すると、ピロリが激減することがわかった。 また、ピロリに感染している三大の成人に、LG21を八週間投与しかところ、ピロリの数や胃の粘膜の炎症が減ったとの報告もある。乳酸菌がピロリを減らすメカニズムは、次のように考えられる。
まずひとつはピロリが、胃酸が出す塩酸には強くても、乳酸菌が出す乳酸には弱いこと。次に、乳酸菌がピロリのえさを奪うことが指摘されている。
しかし、乳酸菌ならどれでもピロリをやっつけるとはかぎらない。胃の中は強い酸性なので、普通の乳酸菌では生きられず、効果が薄れる。胃酸に強い菌株や、胃の粘膜に粘着する力が強い乳酸菌であれば、いいわけだ。その菌株が、LG21だったわけだ。
ピロリに対して効果を発揮するには、なるべく長く胃の中にLG21がとどまっていることが必要だ。もちろん、乳酸菌そのものを飲んでもかまわないが、ヨーグルトとして食べると、胃の中にいる時間が長くなり、効果がある。なお、LG21以外にも、LCI(ラクトバチルスーカゼイ)もピロリを低減させる効果がある。
そこで古賀教授は、ある乳業メーカーの研究所と共同でピロリをやっつける乳酸菌の菌株の研究をはじめた。乳業会社の研究の命は、なんといっても世界各国から集められた多種多様な菌株だ。古賀教授は、その株のコレクションの中に、ピロリをやっつける菌株のLG21を発見したというわけなのだ。古賀教授と乳業会社の共同研究は、産・学共同の研究として大いに評価されるいい例だと思う。こうして、ピロリとがんとは無関係という一九七四年の説は、四半世紀後にはくつがえされ、ピロリストーリーが生まれたのだ。
四〇代以上の人たちの七〇%にはすんでいるといわれるピロリ。ストレスをかかえ、不規則な生活、高脂肪・高たんぱく質の食事をしているオヤジ世代にこそ、ヨーグルトを食べていただきたいと思う。一日一杯のヨーグルトは医者を遠ざける(A Cup of yogurt a day keepS a doCtoraway )。
- ヨーグルトの整腸作用
整腸作用の第一は、昔からいわれていた乳酸菌の「お腹の調子を整える」効果だ。 - ヨーグルトで超便秘の解消
ヨーグルトをとると、乳酸菌がっくり出す酢酸や乳酸が、腸を刺激してぜん動運動を活発にするので、便通がよくなるのだ。 - ヨーグルトの腸内環境改善作用
乳製品に含まれるたんぱく質やビタミン、ミネラル類の吸収をよくする。とくにカルシウムは乳酸と結合して乳酸カルシウムとなり、吸収されやすくなって骨粗しょう症を防ぐ。