ヨーグルトは血圧を下げる

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「サイレントキラー」(静かなる殺人者)  どこかで聞いた映画のタイトル? ではない。もしかして、あなたにしのびよっているかもしれない殺人者、それが高血圧だ。ちょっとぐらい血圧が高めでも、「たいしたことないさ」と思っているかもしれないが、たかが高血圧とあなどってはいけない。血圧も収縮期血圧(上の血圧)が二〇〇ミリメートルHgを超えれば、頭痛や肩こり、地面が揺らぐ、頭がふらふらするなどの異常に気づくが、一六〇ぐらいなら自覚症状がまったくないことも少なくない。血圧が高ければ、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞、腎機能障害など、さまざまな症状を引きおこすのだ。

高血圧は、血管内を流れる血液が血管壁を押す力が高くなる症状だ。神経系、内分泌系、腎臓の働きなどが悪くなると、血管が収縮したり、水分や塩分の排泄がうまくいかず、血液の量が増えて血圧が上がる。

高血圧は、心臓病や脳卒中などのすべての循環器病に共通しか危険因子だ。現在の死亡率は、がん、心臓病、脳卒中の順だが、高血圧の結果、引きおこされた心臓病と脳卒中の死亡率を合わせると、がんを上回っている。年をとるとともに、高血圧になる率は高くなり、六〇歳以上では二五%が高血圧、三五%が高血圧の傾向がある。実に、三人に二人が高血圧状態なのだ。

また、高血圧は代謝異常と関係が深いといわれるようになってきている。高血圧になると、糖代謝を促進するインスリンが働きにくい「インスリン抵抗性」が強くなる。実際、高血圧の人は、糖尿病、高脂血症、肥満などになりやすく、糖尿病の人は高血圧になりやすい。高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満の四つが合併すると、互いに悪影響をおよぽすことから「死の四重奏」といわれている。

高血圧患者の九割は、原因不明の本態性高血圧症といわれ、加齢や生活習慣、食塩のとりすぎ、寒さなどの気候、遺伝などのさまざまな要因がからまって発病している。治療法も、単に降圧剤によって血圧を下げるだけでなく、高血圧性の臓器障害や脳卒中、心臓病などの循環器病の予防なども求められるので、長期の投薬、通院が必要となる。一度、高血圧になったら、生涯つき合う覚悟を迫られるわけだ。

もちろん降圧剤だけでなく、太りすぎを改善する運動や、減塩、禁煙、節酒、脂肪のとりすぎに注意するなどのライフスタイルの改善が求められる。そういわれてくると、高血圧も少し気になり出すだろうか。そこで、乳酸菌に血圧低下作用があることを紹介しよう。

「血圧が高めの方に、毎日飲むことをお勧めします」……あの長嶋茂雄さんのなんともいえないハッピイな笑顔とともに流される発酵乳の広告だ。乳酸菌の菌体成分であるラクトペプタイドが血圧上昇を促進する酵素の活動をおさえて、血圧を下げる効果をうたっている。 

この発酵乳は、いち早く乳酸菌の血圧降下作用を取り入れたものだ。

高血圧を自然発症したラットに、乳酸菌の一種であるラクトバチルス・ヘルペティカスでつくった発酵乳を与えたところ、血圧を下げる効果が認められた。また、他の乳酸菌であるラクトバチルスーカゼイーシロタから得られた菌体の細胞壁成分を自然発生した高血圧のラットに与えたところ、同様に血圧が下がったと報告されている。

乳酸菌は牛乳を分解し、アミノ酸の結合体であるペプタイドをつくるが、その中でラクトペプタイドに血圧を下げる効果がある。血圧の上昇には、レニンーアンジオテンシン系と呼ばれる内分泌系が深くかかわっている。血液中には、アンジオテンシノーゲンと呼ばれる物質があって、腎臓から分泌されるレニンという酵素の働きで、アンジオテンシンーという物質に変化する。さらにこれが、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きで、アンジオテンシR ZZIになる。これが血管を収縮させることから、血圧が高くなる。

乳酸菌がっくり出したラクトペプタイドが、血管の細胞にいち早く付着して、血管の収縮を促進するアンジオテンシンⅡの働きをおさえるのだ。さらに、アンジオテンシン変換酵素の働きをおさえることで、ブラジキニンという血圧を下げる物質の分解をおさえる効果がある。つまり、乳酸菌には、血管を収縮させる物質を減らし、血圧を下げる物質を増やす働きかおる。この作用をもつものが、ラクトバチルスーヘルベティカスだ。ヨーグルトなどで、「ラクトペプタイド」が配合されているとうたわれていたら、この菌株が入っていると考えていい。

また、ほかの乳酸菌であるラクトバチルスーカゼイーシロタにも血圧低下効果があるが、これはプロスタグランジンー2の産生か促進されて、血管の平滑筋が弛緩され、腎臓でのナトリウムの再吸収が抑制されるために、血圧が下がると考えられる。

ヨーグルトそのものを食べることで、高血圧を低下させる効果もある。高血圧の人は血中ナトリウムが高いが、余分なナトリウムをヨーグルトの中のカリウムが体外に排出する。カリウムをとることで、血圧が下がる効果は以前からいわれていた。代表格のりんごでは、カリウムが一一〇ミリグラム(一〇〇グラム中)だが、ヨーグルトは一七〇ミリグラム(同)含まれている。ヨーグルトにりんごを混ぜて食べれば、それこそ高血圧の人には効果倍増だ。

さらに、ヨーグルトのカルシウムが血圧を下げる効果もある。カルシウムの摂取が不足すると、血液中のカルシウムも減ってくる。しかし、副甲状腺ホルモンをはじめとするカルシウム濃度調節ホルモンが、カルシウム濃度のバランスを保とうと、不足しか分のカルシウムを骨から補う。骨からカルシウムが血液中に溶け出すのだ。そうした調整が長期間続くと、逆に血液中のカルシウム濃度が高くなり、余分なカルシウムが血管壁などに沈着する。そのため、血液がスムーズに流れなくなって、血圧が上がるというメカニズムがある。

また、細胞中にカルシウムが多くなると、筋肉は収縮する。骨から出てきたカルシウムは、平滑筋の細胞に付着して血管を収縮させ、血圧を高めることになる。

日ごろからカルシウムをきちんととっていれば、血液中のカルシウム濃度も十分に保たれ、骨からカルシウムを補う必要がない。骨からカルシウムを補い続ければ、骨のカルシウムが減って、骨粗しょう症になる。とくに、閉経後の女性はカルシウムを十分にとることを心がけてほしいものだ。また、乳酸とカルシウムが結びついた乳酸カルシウムは、カルシウム単体よりも、消化・吸収されやすくなる。 

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