現代の食事が腸内細菌を変える
食事が腸内細菌叢に影響をおよぽしていることが指摘されはじめたのは、がんの発症部位の変化によるところが大きい。一九六〇年代まで、国や地域に上って、がんの発症部位についてのおおよその特徴がみられた。欧米では大腸がんや乳がんが多く、日本では胃がんが多い傾向にあっ
た。前述したように、日本の東北地方の人たちやアメリカに移住したI世には胃がんが多く、2世、三世には大腸がんが多いとの疫学調査もある。現在では、大腸がんや結腸がんが多いアメリカでも、一九二〇年代までは胃がんが多かった。
また、教義により、禁酒・禁煙で、肉・魚・卵など動物性たんぱく質をいっさいとらないベジタリアンであるSDA(セブンスーデイーアドベンティスト)のがんの死亡率は、一般のアメリカ人とくらべると低いとの結果が報告されている。とくに、喫煙や飲酒と関係の深い呼吸器、食道、膀胱のがんに上る死亡率は著しく低い。
がんと特定微上物の関係を調べる研究が飛躍的に進んだ結果、高脂肪・高たんぱく質の食事が、どのように腸内細菌叢の構成を変えていくかもわかりはじめている。
高脂肪食を食べ続けると、胆汁酸の分泌が活発になるが、それからできる誘導体が発がん促進物質になるといわれている。
また、高たんぱく質も問題だ。たんぱく質は分解されて、アミンや腐敗物質ができるが、それらを分解して発がん物質に変える腸内細菌が存在する。まだ菌の特定は研究中だが、培養困難とされてきた菌を解明することで、その答えが見つかるはずだ。
さらに最近、さまざまな病気の原因と考えられている活性酸素にも腸内細菌は関係しているとみられている。活性酸素を除去する抗酸化物質の効果が、大腸の環境によって左右される可能生があるのだ。つまり腸内細菌によって、抗酸化物質の活性が抑制するほうにも、促進するほうにも働くと考えられるのだ。
- 過敵性腸症候群(以前は過敏性大腸炎とよばれていた)
過敏性腸症候群は、精神的な不安や緊張などがもとで自律神経系に乱れを生じた結果、腸の運動や分泌機能が過致になって、便通異常を起こす病気だ。特徴は、下痢や便秘を繰り返す。腸そのものに炎症などの器質的な異常はなく、精神的な影響による症状がみられる。 - 腸内細菌が引きおこす病気
腸内細菌は、腸管に直接障害を与える場合と、血流を介して全身に回り、全身疾患をおこす場合とがある。どの腸内細菌がそれぞれの病気を引きおこす原因であるかの特定はまだできていないが、がんを誘発する中間物質をつくり出す菌の解明は少しずつではあるが進んできているのだ。 - 現代の食事が腸内細菌を変える
食事が腸内細菌叢に影響をおよぽしていることが指摘されはじめたのは、がんの発症部位の変化によるところが大きい。