昨今の若い女性のウンチの現状
「便の研究をしている辨野先生に、ウンチを調べてもらいたい」‐‐最近の健康ブームにのって、私の研究室にもテレビ局の取材が頻繁に訪れるようになった。のっけから、臭い話で恐縮だが、まず、そこで「鼻にした」ウンチの話を聞いていただきたい。
それは、クール宅配便で「食品」として送られてきた。厳重に包装された容器を開けたとたん、どう形容していいかわからないほどの強烈なにおい。研究室のみんなはのけぞり、逃げ出したほどだ。石のようにコロコロで、数層に重なり、パラパラとはがれて取れる。しかも、そのウンチのかたいこと。大の男がどう力を入れてもナイフで切れない。今まで、日本でいちばんウンチを見てきた豪語できる私でさえ、初めて目にするウンチだった。
さらに、その中身に驚いた。ウンチの水分含量は61%。通常、健康な人間の便は半練り状で、水分含量は80%前後。水分が70%になると、重症の便秘だといわれる。それが61%とは……。便はたぶん、大腸壁にこびつついていたはずだ。大腸内の細菌を調べると、善玉菌といわれるビフィズス菌が0.01%、悪玉菌のクロストリジウムが16・2%だった。通常これらの菌は、それぞれ10~15%、5~6%であるといわれているから、これは善玉菌がほとんどなく、悪玉菌が超優勢の驚異的な数字といってもいい。
ウンチのpHも調べた。通常、人間のウンチのpHは、6.2から6.8で弱酸性だ。ところが、そのウンチのpHは8.3のアルカリ性。私は目を疑った。何度、検査しなおしてもpHは同じだった。これでは肉食動物の便と同じじやないか。肉食動物の便はアルカリ性なのだ。そこでためしに、わが家の飼い大の便のpHを調べてみたら6・5たった。こっちの大より、肉食だ!」私は30年問、腸内細菌を研究してきたが、pH8.3のウンチなんて初めてだった。
世の中にはとんでもないウンチがあるものだ。何のウンチなのか? 人間か、動物か? ウンチの生か想像できない。
その驚異的なウンチの主を知ったとき、私は言葉を失った。なんとそれは、20歳の女性だったのだ。のちに放映されたテレビで拝見したその人は、スラリとしたうら若さ女性。ウンチからは、想像もできない容姿の持ち主だった。「あの人から、あのウンチ……り‥」顔かたちを見たあとでも、私の頭からはあのウンチがこびりついて離れない。
その20歳の女性はひとり暮らしの大学生。ふだんから便秘を繰り返し、体調はよくない。肌によつぶつができるという。前述のウンチも2週間も便秘が続いたあと、下剤を使ってやっと出しかものだそうだ。「便秘が2週間!」と聞くと、私などはそれだけで気が遠くなる。けれど、彼女にとってそれは日常茶飯事。
「えっ、ウンチつて、毎日出るんですか?」
と真顔でたずねられた。驚くことに、一週間以~出なくとも、とくに便意を感じない、別に、つらくはないというのだ。
いったい彼女は、どんな食生活をしているのだろうか?「お菓子しか食べない。あとはペットボトルのジュースかな」という返事。
彼女の生活は不規則で、食事はしない。お腹がすいたら、口にするのは手近なお菓子だけだ。ここ何年も、ご飯粒など食べたことがないという。
「だって、炊飯器なんてないもん!」
なるほど、それでは便秘もするし、便意も感じなくなるわけだ。頭がクラクラしてきた。
そこで私は、その女性には三度の食事をとるよう食生活の改善を促し、ヨーグルトを一日300グラム10日間、続けて食べてもらった。「ちゃんとした食事」とはいかないまでも、それまでのお菓子のみの生活は改善された。すると、毎日ではないが、下剤を使わなくともウンチが出るようになったのだ。
「毎日、ウンチが出るなんて小学校以来かな」とのこと。また、測定不能だったビフィズス菌がて二・八%に増え、悪玉菌のクロストリジウムが0・05%に減少し、腸内の環境が改善されたのだ。
私は仕事柄、さまざまな人だちからウンチをいただいている。今まで、若い女性にウンチをくださいというと、「体を全部みられる」と思うのか、変な人!」と見むきもされなかった。それが、健康を扱うテレビのおかげで、ウンチをいただける幸運に恵まれたのだが、調べていくうちに、若い人たちの危機的な現状を知ることになったのだ。
そして、わかった驚くべき現実!若い女性に、「臭くてかたい」ウンチが、なんと多かったことか。先はどの20歳の女性のウンチは、特殊な例外ではなかった。驚くなかれた! 出会ったウンチをご紹介しよう。
- 25歳のOL。ウンチの水分含量は60~70%、ビフィズス菌は7.5%、クロストリジウムも7・5%。水分含量が低く、かたいウンチ。
- 33歳の主婦。水分1 量4五%、ビフィズス菌16・5%、クロストリジウム7・4%。ビフィズス菌は高めだが、水分含量が極端に低い。
- 27歳の出産後の女性。かなり育児のストレスがあって眠れないという。水分含量62%。
ビフィズス菌は、菌数が低いために検出不能。クロストリジウムは1・1%。善玉、悪玉両方の菌数が非常に少ない状態だった。低い水分含量、善玉のビフィズス菌が極端に少なく悪玉のクロストリジウムが多いという、こうしたウンチの内容は、がっては老人にみられたものだった。しかし事例のように、今では若い女性の腸内の環境に劇的な変化がおきているのだ。
- 伝統的な日本型食事で腸内年齢を若返らせよう
高脂肪・高たんぱく質・低食物繊維の食事によって腸内環境が変わり、悪玉菌が増加し、善玉菌が減少ずるからだ。 - 毎日大量の肉を食ベたら大腸がんの発生率が高くなる
悪玉菌を増やして善玉菌を減らず腸内細菌の環境を変える要因は、食べ物、ストレス、運動不足、あるいは極端なダイエットだ。こうしたことが腸年齢の老化を促進している。この腸年齢こそが、端的に生活習慣病の予備軍を見つける手がかりになるかもしれ ない。 - 腸年齢の老化の原因は欧米型の食事にある
腸年齢を老化させ原因は、なんといっても食生活の変化だ。穀物や野菜、魚中心の伝統的な食事から、肉食へと変わった食上活の欧米化か、病気の質を変えた原因だ。肉の多食により、腸内細菌の構成も大きく変化したと考えられる。